”西加奈子” さんの小説「i(アイ)」のあらすじと要約、読んだ感想をお伝えしたいと思います。
感想にはネタバレも含みますので、まだ読んでいない人はご注意ください!
小説「i(アイ)」のあらすじと要約
主人公のアイは、シリアで生まれますが、アメリカ人の父と日本人の母の養子となり、ニューヨークで幼少期を過ごします。
父と母は、不自由のない環境を与えてくれ、また、アイを一人前の人間として扱います。
シリアで生まれたこと、世界にはほかにも困っている人がいること、自分たちは恵まれていることを忘れてはいけないということなどを、小さいころから教え込まれます。
じつはこれが逆効果で、繊細な心を持ったアイは、自分は困っている側の人間だったはずが、たまたま恵まれた環境に来られて、いい思いをして、申し訳ないと思ってしまったのです。
ただそんなことを両親に言って、もしまたシリアに返されたら、どうすればいいのだろうと、一人で恐怖を抱え続けます。
アイは中学生のときに日本へやってきます。高校で出会った友達ミナとの関係が見どころです。
アイもミナも変わり者なので、ふたりはすぐに気が合いました。
高校を卒業して環境が変わっても、お互いが唯一の存在です。
ですが長年の付き合いの中で、すれ違いが起こります。
ミナが、アイを傷つけたことを謝るけれど、自分の意見は変わらないんだ、としっかりと説明します。
お互いをとても大切にしていて、ふたりの関係がまぶしいです。
ここからはネタバレを含んだ感想となりますので、まだ読まれていない人はご注意ください!
小説「i(アイ)」の感想(ネタバレ含む!)
アイとミナの二人の関係を思い浮かべながら自分を省みました。
大事な友達との関係が悪くなりそうでも、謝らないことがあります。
気づかないふりをして、他の友人と過ごしたりします。
謝ることを避けたい、ごめんと言う自分は無能な人間、だから謝るようなことにならないように留意する、踏み込み過ぎない。そういう考えになっていました。
謝っても自分を見失わない強さがあれば。何人も友人を作ってつどつど気分よく過ごすことをしないで、深く一人一人と話し合うことができるはずだ、そういう勇気をもらえました。
小説「i(アイ)」の感想まとめ
世界のいろいろな問題について、民族について、経済格差について、血のつながらない家族の子と格式のある家族の子それぞれの問題。
友人と意見が違ったときの話し合い方。微妙な年齢になった時の女友達同士の妊娠の話題の難しさ。
様々な問題と人間関係についてどっぷり考えさせてくれます。
幼少期に海外に居住していた西加奈子さんならではの小説だと思います。
西さんの小説にしばしば見られる、ラストのとんでもなく美しい景色は、この作品にも健在で、クライマックスとして最高に光り輝いています。

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